2024/03/10

彼岸の図書館

 カフェ学校の説明会を聞いて、カフェを数軒「見学」して帰った翌日も、精力的にまた「見学」をしようと考えていました。いくつか候補となる店をピックアップして、効率的に「見学」していくにはどのルートがいいか、などといったことを考えて就寝し朝を迎えました。前日の興奮や疲れも少し残ってはいたのですが、そこを再び奮い立たせて、ピックアップしたカフェのホームページなどを見ながら、自分が作ろうとしているカフェに思いを馳せていると、ふと…
あの図書館に行きたい
という思いが沸々と湧いてきたのです。

 その図書館は、奈良県の東吉野村という、交通の不便なところにあります。ご夫婦で移住して運営されているそうで、移住の経緯や図書館での取り組みについて書かれた本を出版されていて、その本が新聞の書評欄で紹介されていたことから私の知るところとなり、いつか行ってみたいと思っていたのです。丁寧なホームページを作っておられて、ネットで検索するとすぐに見つかりました。開館カレンダーを見ると、その日は開館日です。次の週末は開いていません。ここからクルマで2時間半。最寄りのインターチェンジから高速道路を走り、いままで降りたことのないインターチェンジで降りて、いままで走ったことのない道を走って、知らないところにいって、知らない人の家に上がり込む。多少不安に思ってもおかしくはないシチュエーションですが、なぜか何の不安もなく、そこに、その日、自分が行くべき場所がある、という何か確信めいたものに動かされてクルマを走らせました。

 図書館とは仰っていますが、個人の家を開けておられるのですから、まずはネットで訪問の旨を連絡し、途中のサービスエリアで手土産を買って行くことにしました。結果的にはそんな気遣いはまったく必要ではなかったようですが、親しくしたいという思いもあったので、無駄なことではなかったと思います。辿り着いたその場所は、本に書いてあった通り、谷川を渡る小さな橋を渡った「彼岸」にあって、その橋が、何か異世界への入口であるような雰囲気を醸していました。映画「千と千尋の神隠し」の冒頭に出てくる奇妙なトンネルを通り抜けるような感覚で橋を渡り、ぬかるんだ道を進んで縁側から中に入ると、ストーブが焚かれる音だけが静かに響く「閲覧室」が私を迎えてくれました。「いらっしゃいませ」と声を掛けられるわけでもなく、水が出て来てメニューが出されるわけではないのですが、自分がそこに受入れられているという実感がありました。
この感覚…
前日、カフェを「見学」していて得られなかった感覚はこれなのかもしれません。小奇麗な設えも店員の丁寧な対応も笑顔も、自分を迎え入れるためのものではなく、自分の財布の中からサービスの対価を支払わすための装置に過ぎない。その場所に自分が受け入れられているようで、本当は受け入れられていない。それがきっと疲れの原因ではないか。そんなことに気付いたのはもっと後のことですが、この彼岸の図書館で思ったことが、そんな考えを導いてくれました。

こんな場所を作りたい

それは「構想」として形になりかけてきた Cafe & Library を再び「妄想」の世界に戻すことかもしれませんが、このまま形ばかりが具体的になっていても、自分の作りたいものとは別のものが出来てしまうかもしれません。こうして、私のカフェ構想は大きな転換点を迎えました。


0 件のコメント:

コメントを投稿